#24 士業に必要なこと「専門知識と誠実性」

世の中にはいくつかの専門士業があります。いわゆるサムライ業というもの。
公認会計士もその1つに数えられます。

さて、サムライ業にとって必要なことって何でしょうね。
今日は著名な医学者の言葉で私の心に残っていることを切り口に書いてみたいと思います。

とある医学者の言葉

東京大学先端科学技術研究センターの児玉龍彦教授が、以前とあるテレビ番組でこんなことを言っていました。

「医師になる時に2つの心構えを教わる。1つは基礎科学としてのトレーニング、もう1つは勇気だ」と。

これは最初の新型コロナウィルス騒動となった2020年春頃の番組だったと思います。
1回目の緊急事態宣言が出されていた時でしょうか。
とにかく世間が一番おののいていた頃。
一方で、ワクチンもなく、薬も未承認のを使ってでもなんとか治療できないかと叫ばれていました。アビガンアビガンって。
(ちなみに、私は児玉教授がコロナに対しての基本的な見解を知りませんし、それについてどうのこうのも全くありません)
その時に言われていましたのが先ほどの言葉です。
さらには次のようなことも言われていました。
「手のないと思われる新しい病気に向かうときに、何か手はないか考えなさい、と教わる。」
「人類の医学の歴史は、勇気と誠実さをもって新しいことにチャレンジするという繰り返しから生まれてきたのだ。」

公認会計士に通ずるもの 専門知識

まず、基礎科学としてのトレーニング、これは言い換えるなら専門知識ですよね。
公認会計士も、会計や監査での専門家という立ち位置ですから、これらの専門知識は常に保持していないといけない。
おそらくこれは公認会計士以外の士業もみんな同じなんじゃないかって思います。
弁護士なら法律、税理士なら税法、医師もサムライとは書きませんが医学知識が必要。
しかも常時改正されていくので、アップデートを中心としたトレーニングは必要不可欠。
この辺りはそのまま通ずるものがあるなと思います。

勇気の背景にあるもの 誠実性

一方で、勇気の観点。
公認会計士は、どこまでいっても人命を扱う職業でないので、勇気と言われてもそんなん必要なんか?と思います。
正直無くても良い場面の方がなんとなくですが多そうじゃないですか?
医師はどうでしょう。医師には勇気が必要だというのは、素人ながらどこか理解できます。
ここで、勇気があればそれでいいのか?という点を私は思いました。
突っ込んでいえば、勇気があるといっても、その背景というか。
例えば無謀な勇気ということはあっていいのか?
逆に怯えててばかりでも前に進まない、何も助かっていかない。
それでいいのか?

児玉教授の言う勇気とは、その背景に「誠実性」があることを前提としているような気がしたのです。
勇気をもって動く、慎重に事を運ぶ、リスクを取る取らない。どれも正しくあり得る。
正解は状況によっても異なりますし、簡単なものではない。
人によっても考えは異なるでしょう。

公認会計士が守るべき規則に「倫理規則」があり、そこでも誠実性の原則が謳われています。
不正や誤謬を見つけたとして、それにどう対応すべきなのか?
見逃して本当にいいのか?
修正さえすればいいのか?
1点の曇りもなく見逃さずキッチリ対応することだけが正しい行動と言い切れるのか?

私は教科書的に想定される答えが全てとも思いません。
人によって結論が異なる場面もあるでしょう。
その行動に義があるのか?
義はそれぞれの立場によって異なることもあるのではないか?
だからこそ、常に自問自答しなければならない、それが公認会計士業に携わる勇気でもあり誠実性でもあるのかなと。

専門知識×誠実性=信頼

考えてみれば、士業は信頼を売っている職業である、総じてこう言えることなのではと思いました。
「専門知識×誠実性=信頼」
公認会計士もこの算式で成り立っている職業な気がします。

各々の得意分野や性格を生かし、掛け算が最大になるよう努力をする。
稲森和夫さんの言葉を引用すれば、誠実性はマイナス側にも触れるリスクがありそうですので、間違ってもマイナスにはならないよう戒めないといけませんね。

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