前回に続きNTF関連。前回はNFTの概要でした。
② ビジネスシーンへの期待
このNFT、様々な分野でビジネス化が期待されているようです。
デジタルアート、音楽、ゲームアイテムなど。
例えばゲームアイテムで考えてみます。
(私は最近のゲームとかあまり知らないので、当たり前or事実誤認があったらすみません)
(ある日のこと)
『D君がドラクエ(RPGゲーム)で、激レアな剣を入手したとします。大変な労力の末に・・・
その後、ゲームを全クリアしてしまい、この剣は必要なくなりました。
でも、お友達のQ君はこの剣を持っておらず、欲しく仕方がありません。
D君はQ君に譲渡しても問題ないのですが、労力かけて入手した激レアをタダであげるのも・・・
「自分の剣」なんだし、値段付けたいなー』
ビジネスに広がりそうな予感がしませんか?
ただ、ここまでまら割と簡単そうです。
少しシナリオを続けます。
(数日後・・・)
『PCを空けると、ハッカーらしき理由なのか剣が盗まれてます!
D君は思いました。
「誰が盗んだか探してやる!!・・・でも待てよ、仮に見つかったとして、あの剣、誰のものかなんて証明できるのか!?証拠ねぇだろ、って言われたら終わりだなぁ。あの剣が自分のだって証明できれば・・・俺のモノなのに対抗できないなんて悔しい!』
盗まれる事例は極端かもしれませんが、あり得ない例ではありません。
また、別の例も言えば映画。
正式版の他に海賊版が良く出回りますよね。
当然価値は明らかに前者が上なのですが、外観上は区別つきません。
これでは信頼が持てず、取引が停滞しそうです。
証明できなければ、効果的な転売も困難です。
「デジタル資産の証明技術は、無形資産の価値を高め、円滑かつ活発な取引に繋がる」ということかと思います。
ビジネスの発展に影響しそうなのは、なんとなくても理解できますよね。
③ 対応する会計処理
さて、会計処理です。
まず、NFT固有の会計基準等は現在においてありません。
整備されるまでは、適用される法令や契約関係に鑑み、個別に判断する必要があります。
仮想通貨の会計処理に関しての基準は、当面の取扱いとして3年程前に実務対応報告が出ましたが、仮想通貨もそれまでは同様に個別に判断していました。
新ビジネスの黎明期はどうしても諸整備が追い付かないので止むを得ないところです。
そういう意味でNFTも同じ状況にあると言えそうです。
では、現行の基準だとどれが参考になるのか?
NFTはコンテンツや商品、ソフトウェアの性質を有してきそうですので、この辺りの基準がベースになりそうです。
まず、販売時の会計処理としては、大きく下記の3つでしょうか。
1.「収益認識会計基準関連」
2.「金融商品会計基準関連」
3.「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」
1.は売上計上に関して、2.は有価証券を始めとした金融商品を扱う際に考える会計処理と考えていただければ大丈夫です。
2及び3が適用される資産(例えば暗号資産なら3)ならまずはそちらを、そうでなければ1をベースに検討することになります。
NFTは「トークン=資産」なので、トークンを1つの財(資産)として考え、販売側にとっての履行義務が何か?を検討することになると思われます。
NFTは、所有者(販売者にもなり得る)によるトークンへの多様な権利設計が考えられるようですので、個々の取引内容を良く理解することが大切になる気がします。
一方で、製作時の会計処理としては、大きく下記の2つかと思われます。
1.「研究開発費等に関する会計基準関連」
2.「棚卸資産評価会計基準関連」
論点は例えば以下。
・支出は研究開発費か?ソフトウェアか?
・対象はソフトウェア(無形固定資産)なのかコンテンツ(棚卸資産or無形固定資産)なのか?
・資産計上の費用化。予想収益に応じた費用化か?1トークン辺りの原価を算定し販売数に応じた費用化か?利用可能年数による減価償却費か?
・資産性が毀損していないか?
会計に慣れている方は、やっぱこの辺の論点か、と思われるのではないかと。
従来も、取引内容・契約内容を十分に理解し適用会計基準を判断していますが、この姿勢は同じく重要になるかと思われます。
特に資産性は大きな論点になり得ると思います。会計における資産性評価はコンサバティブな側面がありますので。
「将来の収益獲得or費用削減の確度」をどれだけ説明できるかが重要かと思います。
いずれ何らかの指針が出るのかもしれませんが、取引内容は多様に渡りそうですので、ステレオタイプ的に検討するのではなく、十分に取引を理解することが最も大事かと私は思います。