#48 会計監査の在り方に関する懇談会に対して②

会計監査在り方懇談会 第2回の議事要旨公表

前回の懇談会で公認会計士試験制度の変更?について取り上げられていましたので、先日ブログにしたところです(公認会計士試験制度に関する議論 (is-cpaoffice.com))。

この第2回議事要旨が公表された模様です。
会計監査の在り方に関する懇談会(令和3事務年度)(第2回)議事要旨:金融庁 (fsa.go.jp)
今回も試験制度を始めとしてその他制度上の論点に意見がされています。
今回は、それぞれ気になった個所に対応する形で私の呟きを書きます。

「○・・・」が在り方懇談会の議事要旨
「⇒・・・」が私伊藤のコメントです。

議事要旨と伊藤のコメント

○ 現行の公認会計士法では、監査法人の社員の配偶者が会社の役員に就任している場合には、監査法人はその会社の監査を受嘱することができない。大規模監査法人では、社員が500名以上おり、この規定に該当するケースが実際に見られ、女性活躍推進の妨げになっていると言える。監査法人の独立性の担保は重要であるが、配偶者との関係においては法規制を適切な範囲にとどめ、公認会計士やその配偶者の活躍の機会を奪うことのないように、この規定の見直しを御検討いただきたい。

⇒ 女性活躍推進に特段反対ありません。だからといって「監査法人パートナーの配偶者が役員就任している会社の監査を受けられるようにする」というのは違和感があります。つい先日も独立性に関しての倫理規定(#43 (最新情報)IESBA倫理規程の解説動画がupされました)が公表されより厳格な流れ。
そもそも、配偶者は本人とほぼ同レベルの規制が求められているくらいで、ここの変更は独立性の規制範囲を基本的に変更しないと平仄が取れないと思います。いくら女性活躍云々だとしても、提言が局所的過ぎる気がします。

○ 大規模監査法人においては、監査法人の機動的な運営にあたり実情に合わない法規制がある。例えば、監査法人の合併の承認や社員の脱退に対して総社員の同意が求められている規定について、今後、御検討いただきたい。

⇒ 確かに、当初の立法趣旨に比して随分環境は変わったと思います。有限責任法人化もしてますし、組織運営も完全に大企業と同様です。この辺りは見直しあってもいいでしょうね。

○ 人の育成に向けて、不正を見抜く力を養うため、事業会社との人材交流が必要なのではないか。義務化は多少難しいかもしれないが、各監査法人の公表資料において、人材の評価基準として「多様な経験」が評価されることをしっかり書き込むことが有効ではないか。継続して監査に携わってきた人が評価され、一旦監査法人の外に出ると、監査法人に戻ってもあまりいい評価を得られないようなことはないか。公認会計士には多様な経験が必要だと思うので、監査法人の外に出た公認会計士を積極的に評価するような評価基準を公表していただきたい。

⇒ これはとても共感します。これもちょうど昨日ブログにしましたが、1人でも経営経験を会計士を増やすことは重要だと思いますし、監査法人側に還元するためにも出戻る際のインセンティブを高めることは良い事ではないかと思います。(#47 クライアントビジネスに向き合う経営未経験の会計士)建前として出戻りが不利、というのはないのでしょうが、現実として戻る気は起きない、というのがあるような気がします。

○ 試験制度についてはいろいろな考え方があると思うが、今でも公認会計士を目指す人がたくさんいるわけなので、急に変えるというよりも中長期的にしっかりと検討していただきたいと思う。(中略)どちらがいいのかは様々な考え方があると思うが、個人的には監査だけを担っていると多様な経験値が不足すると思うので、人材の流動化が進んでいくことで、事業会社を経験したり、監査を経験したり、そのような経験の中で不正会計を見抜く力がより養われていき、そうした人が監査法人に戻り、またその人たちが中心となって監査のありようを見直していくといったことがいいのではないか。

⇒ 試験制度についてはさておき、多様な経験値をもった会計士を増やすという点において賛同です。実務家なので、座学でなく経験を持っていることに価値があると思いますので、こういった流れができることはとても良い事だと思います。

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