#61 監査法人からのIPOキャリア①

① ショートレビュー

ショートレビュー(予備調査と呼ぶ場合もあります)は、監査法人とクライアントが初めて顔を合わせるお仕事です。
スケジュールは、少なくとも上場の3年前です。
内容は、上場に向けて現状のクライアントの現状と課題をざーっと洗い出す業務です。
医者で言うと、初診や健康診断のようなものだと言われます。
確かにその性格ですね。
数日程度クライアントに伺い、質問を中心に確認します。
証憑の細かい突合は行わないケースが多いと思います。
その後結果をPowerPointでレポート化します。

確認内容は多岐に渡り、
・会計制度:適用されている会計方針や基本的な会計処理が妥当か?(ex.税効果やっているか、減損やっているか、棚卸資産の評価方法は正しく採用されているか)
・内部統制:主要なプロセスに主要な内部統制が適切に敷かれているか?(ex.売上計上統制、職務分掌)
・機関関連:会社法の各条文を満たした機関制度となっているか?
・利益管理:予算制度、利益管理制度が整備運用されているか?
・関連当事者:企業集団内&関連当事者取引の状況はどうか?

などです。

会計や内部統制は当然として、それ以外の項目も確認します。
上場=投資家から資金調達をするということは、会社の将来計画(予算制度)がなければ投資家は怖くて株を売買できません。
利益管理が杜撰な会社も、将来計画の不透明さや計画的な成長の阻害にも繋がり、やはり投資家の信頼に応えられません。
また、上場は「プライベートカンパニーからパブリックカンパニーへの変貌」です。
株の自由な売買により、不特定多数の株主が会社を保有します。会社は株主のモノですが、オーナー株主から一般投資家のモノへ変わります。
これにより所有と経営の分離が完全に分離するため、資金の使いも公正さが求めらられる。
身内の取引はややもするとグレーになるので、ここは事前に必ずCKされる。

・・・着眼点は書き出せばキリがありません(笑)
要は、監査法人が担う業務範囲は、会計監査周りが本丸ではありながら、これに付随する予算利益管理等も入るイメージです(独立性の問題があるので、監査以外の業務提供をどこまでするかは別論点として存在)。

ちなみに、資本政策(いついくらで外部資本を入れるか)といった点は、監査人の領域ではありませんので、ショートレビューでは詳しくは触れないのが通例だと思います。
これは証券会社とかになります。

スキルセットとしては、上記内容を中心に一通りの内容をCKできることです。
スタッフが同行することもあると思いますが、満足にこなすには少なくともインチャージ以上の経験が必要です。

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