#63 監査法人からのIPOキャリア③

5.キャリアの出口

IPO業務はどういった出口キャリアが考えられるでしょうか。業務内容と環境を切り口に考えてみます。

① 監査
以前はIPOといえば大手監査法人が行う認識がありましたが、ここにきて中小監査法人へオポチュニティがシフトしています。(見方によってはこちらの方が主戦場とも映ります。)
IPO専門の監査法人(こちらなど)も既に立ち上がっているようです。
この流れは止まらないでしょう。
「IPO監査」を行っていく場合は、監査法人チェンジのキャリアが考えられそうです。
前回、ガッツリ専門家になりたいならIPO専門部署、と書きましたが、大手法人はジョブの規模が大きめですので、この違いを想像しどちらで業務したいか?かと思います。

② 会計コンサル
出口キャリアとして、会計コンサルも主要ルートかと思います。
IPOコンサルといっても内容は特別なものでもなく、会計サポートや内部統制構築支援、これらへの課題対応です。
ブティックファームはIPOコンサル業務を良く行っていますので、これらへの転職が考えられるでしょう。
独立会計士がIPOコンサルを行っている例もよく聞きます。私の周りにもいますね。
ジョブの小ささ、小回り性から、会社側も個人の方へニーズを向けるケースは多いでしょう。
ブティックファームや独立を目指す場合のキャリアとして考えておきたいです。

③ M&A、DD、ストラクチャー関連
IPOコンサルには、M&AやDDストラクチャーサービスにも親和性があります。
企業成長の過程で生じる可能性の高いイベントです。
いきなり独立して業務される方もいますが、監査法人からFAS系、外部ファームへの転職キャリアが基本的には考えられます。
自身の守備範囲を広げるという点で、一定レベル経験した後に独立という人もいます。
ちなみに私は独立前、このルートにすべきか結構悩みました。
ただ年齢が40手前になっていたこと、働き方チェンジをしたかった点から、断念しました。
これが正しかったかは、数年後答え合わせしようかな(笑)

④ 事業会社(CFO、経理等)
IPO事業会社へ転身する方も多くいますね。
IPO準備会社には財務知見のある方が必要になるので、会計士へのニーズは高いようです。
役職や業務は、CFOや経理等でしょうか。
ただ経理のみというのは少ないと思われます。
ところで、CFO転身を考えた時、IPO分野へ関与しておくといいと思う理由は、「人脈」による「良質な情報源の確保」です。
逆に業務経験は監査法人出身ならなんだっていいです。
応募という方法もありますが、良質な情報はクローズな世界で回るものだと私は思います。(なのでCFOキャリアに限った話ではないのですが)
ただ「事業を行う側」ですから、仕事に対するスタンスや価値観を監査人時代から大きく変える必要があるのではないかと思います。
未経験の私が言うのはおこがましいですが、理屈先行で動きが悪かったり、リスクとリターンの感覚に乏しい人はどこまで活躍できるだろう、と感じます。

⑤ IFRSだって役立つ 
一般的にIPO業務とは遠い存在のように見えるIFRS。
しかし今やIFRSの知見もIPO業務に大いに役立つと思われます。
理由は、IFRS上場がここ数年でもはや普通になってきたことです。
新規IPOで、将来の海外資金調達等を考えたら、最初からIFRSにしようと考えても全く不思議ではありません。何も構築してきていないなら準備面でも不都合なしです。
「IFRS=大手監査法人国際部」のイメージがつくのは、既存の上場企業(グローバル企業、大企業)だけを見てしまうからです。
IPOサービス提供側の我々会計士にもIFRS知見を発揮するチャンスが十分にあります。
しかし、私もなんですがIFRS経験を持たないIPO関連会計士はまだまだ多い印象です。
なので、IPO志望だったけど国際部に配属されたスタッフの方も、将来役立つ可能性は十分あると考えていいと思いますよ。

さぁ、この辺りで筆をおきます。
業務の棲み分け、独立性等を要因に、IPOによる将来キャリア選択肢は以前より増えていると思います。
会計監査の基本習得をする間に、その後のキャリアイメージを持てておけるといいですね。

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